最新更新日 2005年 9月 9日
今回は、調律のお話です。
現在、一般に使われている調律法は、十二平均律(単に平均律とも)と呼ばれるものですが、この調律法がヨーロッパで一般的になったのは19世紀半ば頃からで、それ以前は、純正律が主流でした。
十二平均律とは1オクターブを12等分した音律ですが、この発想は、すでにJ.S.バッハの時代からありました。(中国では、447年頃には平均律に近いものを算出している)
それまでの純正律は、純粋な響きを得られる代わりに転調や移調が難しく、調性の違う曲を演奏するたびに調律し直さなければなりませんでした。
また、一部の音の組合わせでは、ウルフ音と呼ばれるうなりがあり、作曲の壁となっていました。
これを改善するために考案されたのが平均律です。
各音程を平均に保ち、純粋な響きを犠牲にする事で、一つの曲の中で転調・移調し、多彩な和声を使って作曲できるようになったのです。
バッハの時代の平均律は、現在の十二平均律とは少し違っていたようですが、まだ純正律が主流だった時代において、バッハの作曲した「平均律クラヴィーア曲集」は、平均律の可能性を示したものだったのでしょう。
では、純正律とはどのようなものだったのでしょうか。
少し難しく言うと、「ある基本音を起点として、音程が協和する(周波数の比が簡単な整数比になる)ように、音階の各音を順に採って決定していく音律。」です。
例えば、長調の純正律を作るには、長調で最も用いられるド-ミ-ソの和音、ファ-ラ-ドの和音、ソ-シ-レの和音がそれぞれ4:5:6の周波数比で鳴らせるように置かれます。
こうすると、一つの調の中では、純粋な響きで演奏する事ができます。
しかし、レ-ファ-ラなど、一部の和音では濁った響きになってしまい、その改善の結果として、平均律が生まれたのです。
平均律の弱点は、響きの純粋さを犠牲にした事でした。
しかし、ピアノなどの演奏中に調律を出来ない楽器はともかく、歌のように、随時、音高を変化させられるものはどうでしょう。
合唱や重唱の場合によく耳にする「ハモり」という言葉ですが、これはつまり、純正律的な響きを指しているのではないでしょうか。
だとするならば、こうしたハーモニーの訓練は、平均律で調律されたピアノに合わせて練習していては身に付かない事になります。
平均律は、確かに現代音楽に無くてはならないものですが、演奏者は、自身の純正律的な感性に耳を傾ける事も必要なのかも知れません。
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